内惑星である金星は、太陽と地球の間を584日毎に通過している。
しかし、金星の公転軌道面は地球のそれとは3.4度ほど傾いているため、
太陽と地球と金星が一直線に並ぶ機会はとても少ない。
その滅多に遭遇できない珍しい現象が起こったのが1874年(明治7年)12月9日のことであった。
日本はこの観測の最適地であるとされ、世界各国から大勢の天文学者が渡来し、
横浜、神戸、長崎などに大規模な観測陣が敷かれ、
ここ横浜ではフランシスコ・D・コバルービアス隊長率いるメキシコ観測隊が野毛山に観測場を設置し、観測にあたった。
当時メキシコ隊が観測機器を据え付けた台石が現在も民家の一角に残っている。
横浜の観測地点として第1観測地点は、この石碑のある野毛山で、第2観測地点は山手であった。また、
当時の金星太陽面経過観測に関しては、
天文学でも地球から太陽面の距離が正確にはわからなかったため、
太陽面上を通過する金星を地球上の各地で観測することで天文単位を算定していた。
この記念碑は、この観測の成功を記念し、100年後の1974年(昭和49年)に建立されたものである。
<碑文>
EL TRANSITO DE VENUS 9 DICIEMBRE 1874
金星太陽面経過観測記念碑
明治7年(1874年)12月9日メキシコ観測隊(隊長フランシスコ ディアス コバルービアス)
ならびに日本水路寮の海軍中尉吉田重親らは、下記地点において金星の太陽面経過の観測に成功した。
ここに100年の記念日を迎え、神奈川県及び横浜市の協力を得てこの碑を建て後世に伝える。
第1観測地点(野毛山)東経139°37’48” 北緯35°26’45”
第2観測地点(山手)東経139°39’02” 北緯35°26’07”
昭和49年(1974年)12月9日 金星太陽面経過観測記念碑設立期成会 |